今回は、僕が
研修医・OJT(搭乗訓練)枠としてドクターヘリに搭乗させていただき感じたこと
について、初期研修医の目線から感じたことを中心に書いていきたいと思います。
この記事は、
・ドクターヘリについてドラマでは見たことがあるけど、実際どんな風に運用されているかはよく知らない方
・フライトドクター、フライトナースに興味のある看護科、医学科の学生
のみなさんに読んでいただきたい記事です!
医療関係の方でなくてもなるべく読みやすいよう注釈などもつけたので、ぜひ最後まで読んでみてください!
そもそもドクターヘリとは?
ドクターヘリについては、人気医療ドラマ「コードブルー」などで見たことがある方も多いと思います。
一方で、救急車や消防車などと比較すると実際に見かけたり、生活の中でドクターヘリの存在を身近に感じる人はあまりいないのではないでしょうか。
僕自身もあまり詳しく知らなかったので調べてみました。
すると、そもそもドクターヘリとは通称名であって、正式名は救急医療用ヘリコプターが正解だそうです!
ドクターヘリの役割としては、大きく分けるとこのような感じです。
・重症患者への治療開始時間を短くするために、いち早く医療スタッフや医療資源を提供すること
・治療をしながら、病院へ患者さんを早期に搬送
・遠方の病院への転院目的の搬送
普段の各地域の医療現場はもちろんですが、
災害時には消防のヘリコプターと協力して患者さんの搬送や災害現場での医療に大きく貢献します。
平成30年9月時点では、43都道府県53機のヘリコプターがドクターヘリ事業を実施しており、年間搬件数も年々増加傾向です。
搭乗するスタッフは、医師、看護師、操縦士、整備士で構成されています。
このスタッフ構成は、最も早くドクターヘリによる医療を開始したドイツを見習ったものですが、
なんとアメリカでは搭乗する医療スタッフは看護師またはパラメディック(※2)のみで、医師は同乗しないそうです!
「コードブルー」で相澤先生が、
I was used to be a flight physician.(私は以前フライトドクターをしてました)
ってオペ中に言ってたけど、アメリカにはその仕事はないのか...笑
初めて搭乗する際の具体的な流れ
ドクターヘリに初めて乗るときの具体的な流れとしては、僕の場合
①医師、看護師、操縦士、整備士、CS(※2)の全員で各自の体調、今日の天候と出動可能範囲について確認しあうためのミーティングに参加。
②実際にヘリに乗り込み、医療器材や薬品の確認。通信機器の音声チェック。
③搭乗スタッフとしての安全活動のための講習を受ける。
という流れでした。この行程を終了して、OJT(搭乗訓練)枠としてドクターヘリへの搭乗が許可されました。
(この流れについてはもしかしたら各都道府県で異なるのかも。
気になった方は各々確認していただくことをお勧めします。)
ヘリコプター後方のテールローターに巻き込まれて事故が起きないよう、エンジンがスタートしてからは絶対に機体の後方にいってはならない!ということが印象的でした。
いよいよ搭乗!
講習を終えてまもなく、出動要請が入りました!
心筋梗塞の既往がある70代男性の突然の呼吸苦、喘鳴(※3)。
要請後5分もしないうちに離陸し、目的地へと時速200kmで直行します。
無線から届く救急隊到着後のリアルタイムの患者情報を、フライトドクターが効率的に聴取し、呼吸苦の原因を考えます。
その間に僕が感じたのは、経験したことのないほどのプロペラの騒音と、機内の揺れ。
騒音に関してはヘットフォンをすることでだいぶ解消されるのですが、予測不能の揺れに到着直前には空酔い状態に…笑
毎日鏡の前でターンしまくってたから、三半規管強いはずなのになあ笑
まずは酔わないようにしっかり体調管理するのがフライトドクターへの第一歩なのかと感じました。
患者を乗せた救急車と待ち合わせる地点である、ランデブーポイントに到着すると、患者さんは酸素マスクをつけて冷や汗をかきながら呼吸している様子。
無線連絡の通り酸素投与後はバイタルは安定しているようでした。
話を聞くと、急に息苦しくなったというよりは2-3日前から調子が悪くなっているとのこと。
心エコーでは全体的に心臓の動きは悪いのは確認できますが(おそらく限局的ではなさそう)、ポータブルの簡易的なエコーであるためそれ以上の詳細な情報を得ることは難しそうでした。
呼吸が苦しい原因は心臓だと想定することは可能ですが、ここで問題になるのはこの原因が、
・もともとあった昔の心筋梗塞のせいで悪い心臓の動きが、なんらかの体調不良でより悪くなっているのか
・新たな心筋梗塞が起きているのか
ということです。
病院で救急患者を対応する救急外来であれば採血や12誘導心電図など、鑑別に有効な検査を行うことができるのですが、救急車内で行える検査は限られています。
救急隊の方々が普段されている、プレホスピタル(※4)の難しさを初めて身をもって実感しました。
その後も2度出動要請でヘリに乗って、その帰りに上から自分の母校や出身の団地を眺めながら、なぜか自分が誇らしくなったそんな一日でした。笑
前から少し興味のあった、プレホスピタルの研修プログラム、JPTEC(※5)を受けてみようかな!
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※1…パラメディック: アメリカにおける、救急処置を行える救急救命士のこと。日本のいわゆるコメディカルとはニュアンスが違うようです
※2…CS:コミュニケーション・スペシャリストのことで、ドクターヘリを活用した救急活動に伴う情報の統括、消防や救急との情報共有をおこなう職種のこと。
※3...喘鳴:息を吐くときにひゅうひゅうという音。気管支喘息などの時に聞き取れる。
※4...プレホスピタル:病院に到着する前に治療介入すること
※5...JPTEC:日本救急医学会公認の病院前外傷教育プログラム。救急隊や救急医など、プレホスピタルに関連する医療従事者が対象。
【参考・参照文献およびサイト】
・ドクターヘリハンドブック ~ドクターヘリ安全運航のために 日本航空医療学会監修 (へるす出版)
・日本航空医療学会 公式HP